「相続とは」
相続という言葉からイメージすることは、土地、有価証券、現預金など金めのものだ。
相続財産といえば、どれだけ資産があるか。
それを誰れがいくら程もらえるかと思う。
欲のかたまりの相続人の相続争い。よく見聞する話である。
私も父からそれなりの金目の相続をした。一生食べるには困らない。
そうです。プラチナの箸とひとわんの茶わんを。
私も齢六十を超え、被相続人の立場になった時に、相続とは何なのかと考える。
金目のことは否定できない。多ければ多い程よいと思う。
だが、金目をたくさん持たない私が相続人に渡すものは、と思った時に一番の相続財産は、私の生き方であり、死生観でありたい。
自分も大切だが、自分だけではない、他の人も大切にし、利より真を尊ぶ生き方、人を想いやる心、このような私なりの価値観を、私の子が、受け継いでゆきたいと思ってもらえる財産をのこせるよう、限られた時を創ってゆきたいと思う。
父から相続したもの。父の口ぐせであった、「人間として生まれて実にありがたい」。
「グチや悪口や弱音は吐くな」だった。父の言葉とその意味するものを、私は相続したと思っている。