日本医療評価機構 認定第 JC1979号
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『新宿中村屋』
 新宿中村屋といえば、あんぱんを思い出す。
創業者は、相馬愛蔵さん。妻良と、長野県安
曇野から東京本郷でパン屋を始めた。
 パン屋の創業は、妻良さんが、田舎の風俗
習慣と合わなくて病気になり、療養のために
始めた。素人であった。
 玄人がやっていない。日本でこれから成長
する未開のパンに眼をつけた。
「パン店譲りうけたし」の広告に、東大前のパ
ン屋、中村屋が名のり出た。
 居抜きのまま、屋号、職人、道具等すべて
借金して購入する。
 中村屋店主は、商売熱心であったが、贅沢
し、従業員を粗末に扱い、米相場で損した。
 相馬夫妻は、贅沢しない、従業員を大切に
する。相場に手を出さないと決める。
 行商しているうちに、新宿に好立地をみつ
け、店を開く。新宿中村屋である。売上は順
調だった。だが一九二六年、新宿三越が開店
したため、売上は激減する。どうするか。従
業員と話し合い、日曜日の営業を午後七時ま
で二時間延長することにした。結果、売上は
増大する。延長した二時間の売上の一部を従
業員に還元する。
 妻良さんは云った。
「機会はいつも初めは一つの危機としてくる
か、あるいは一つの負担として現れました」
 主人愛蔵さんは云った。
「中村屋の発展は、新しく良い品を安く売る
ことによるものであり、決して華々しい戦略
によるものではないと」
 昔も今も、人を大切にすること、本業以外
にお金を使わないこと、困難から逃げないこ
と、世の流れにさからわないこと等々。極め
てシンプルでプリミティブなことばかりであ
る。